「最近、部下にイライラすることが増えた」
「以前なら気にならなかったことに、つい強く言ってしまう」
そんな変化に、「管理職なのだから、もっと感情をコントロールしなければ」と自分を責めていませんか?
でも、そのイライラは、あなたの性格やマネジメント能力だけが原因ではないかもしれません。
更年期には、女性ホルモンの変化によって、イライラや気分の落ち込み、不眠、疲れやすさなどの症状が現れることがあります。
特に管理職は、部下の育成やチームの調整、上司との折衝など、日々多くの責任を抱えています。
そこに更年期による心身の変化が重なると、これまでなら受け流せていた部下の言動に、強く反応してしまうことがあります。
だからこそ、アンガーマネジメントを考える前に、まず知ってほしいことがあります。
「もしかしたら、今のイライラには身体の変化が関係しているかもしれない」
そう気づくことが、自分を責めずに働き続けるための第一歩になるかもしれません。
更年期にイライラしやすくなる理由
更年期は、一般的に閉経前後の約10年間を指します。
この時期には、卵巣の機能が低下し、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が大きく変動しながら減少していきます。
エストロゲンは、女性の身体だけでなく、脳の働きや自律神経、感情の安定にも関係しています。
そのため、ホルモンバランスが変化すると、次のような症状が現れることがあります。
● イライラしやすくなる
● 気分が落ち込む
● 不安を感じやすくなる
● 急に涙が出る
● 集中力が低下する
● 疲れやすくなる
● 眠りが浅くなる
● のぼせやほてりがある
● 動悸やめまいがする
これらの症状は人によって異なり、日によって強さが変わることもあります。
「今日は大丈夫だったのに、翌日は些細なことで腹が立つ」という場合も、意志の弱さではなく、身体の変化が影響している可能性があります。
管理職だからこそ、イライラを抱え込みやすい
管理職になると、感情を表に出さず、常に冷静でいることを求められがちです。
部下のミスをフォローし、チーム内の人間関係を調整し、業務の進捗を管理する。さらに、自分自身の仕事や家庭のことも抱えている人は少なくありません。
そのため、心身の不調を感じていても、
「管理職なのだから弱音を吐けない」
「部下の前でイライラしてはいけない」
「自分がしっかりしなければならない」
と考え、無理をしてしまうことがあります。
しかし、感情を抑え込もうとするほど、かえって怒りが強くなったり、突然爆発したりすることがあります。
大切なのは、イライラを完全になくすことではありません。
まずは、「今、自分の身体や心に何が起きているのか」を理解することです。
アンガーマネジメントだけでは解決しないこともある

アンガーマネジメントは、怒りの感情と上手に付き合うための方法です。
怒りを感じたときにその場を離れる、深呼吸をする、怒りの原因を書き出すなど、さまざまな対処法があります。
これらは有効な方法ですが、更年期によるホルモン変化や睡眠不足、疲労が背景にある場合、感情のコントロールだけでは十分に対応できないことがあります。
たとえば、睡眠不足が続いていると、脳や身体が十分に休めず、普段よりもストレスを感じやすくなります。
そこにホルモンバランスの変化が重なると、怒りや不安がさらに強くなることがあります。
そのため、アンガーマネジメントに取り組む前に、次のような点を確認してみましょう。
● 最近、眠れているか
● 疲れが取れているか
● 食事をきちんと取れているか
● のぼせやほてり、動悸などがないか
● 月経周期や体調に変化がないか
● 以前より気分の落ち込みや不安が強くないか
身体の状態を見直すことは、怒りを抑えることと同じくらい大切です。
イライラして部下に強く言ってしまったとき、「またやってしまった」と自分を責めるだけでは、問題の解決につながりません。
まずは、次のように振り返ってみましょう。
1.イライラした場面を記録する

いつ、どのような状況でイライラしたのかを書き出してみます。
● 時間帯
● 相手の言動
● 自分の体調
● 睡眠時間
● そのときの気分
● 月経や更年期症状の有無
記録することで、イライラしやすいパターンが見えてくることがあります。
2.その場で結論を出さない

怒りを感じているときは、すぐに注意や判断をしないことも大切です。
「少し考えてから伝えます」
「今は冷静に話せないので、後で時間をください」
と伝え、いったん時間を置くことで、必要以上に強い言い方を避けられます。
3.信頼できる人に相談する

更年期の症状は、外からは見えにくいものです。そのため、一人で抱え込んでしまいがちです。
家族や友人、職場の信頼できる人、産業医や保健師などに相談してみましょう。
「最近、以前よりイライラしやすくなった」
「体調の変化が仕事に影響している気がする」
と伝えるだけでも、気持ちが整理されることがあります。
4.医療機関に相談する

症状が続く場合や、仕事や生活に支障が出ている場合は、婦人科や更年期外来などの医療機関に相談しましょう。
更年期の症状には、ホルモン補充療法や漢方薬、その他の治療法が用いられることがあります。
症状の原因が更年期だけでなく、甲状腺の病気や貧血、うつ状態などである場合もあるため、自己判断せず専門家に相談することが大切です。
5.部下への伝え方を変える

体調の変化をすべて職場で説明する必要はありません。
しかし、必要に応じて、信頼できる部下や上司に伝え方を工夫することはできます。
たとえば、
「最近、体調に波があるため、少し考える時間をいただくことがあります」
「急ぎの案件は、できれば早めに共有してください」
「強い言い方になっていたら、後で教えてください」
と伝えておくことで、周囲も状況を理解しやすくなります。
また、部下を注意するときは、人格ではなく行動に焦点を当てることが大切です。
「あなたはいつもだめ」ではなく、
「この資料は提出期限を過ぎていたので、次回から前日までに確認してください」
のように、具体的な事実と改善点を伝えます。
更年期は働き方を見直すタイミング
更年期は、単に我慢して乗り切る時期ではありません。 これまで無理をしてきた働き方や、すべてを自分で抱え込む習慣を見直すタイミングでもあります。 ● 業務を周囲に分担する ● 優先順位を明確にする ● 不要な会議や業務を減らす ● 休憩を意識的に取る ● 睡眠時間を確保する ● 定期的に医療機関を受診する ● 職場の制度を活用する こうした工夫によって、心身の負担を減らすことができます。 管理職であっても、すべてを完璧にこなす必要はありません。自分の状態を把握し、必要な支援を受けることも、責任あるマネジメントの一つです。
FemCaree監修医/ 女性内科専門 伊沢医師コメント

更年期に部下へイライラしてしまうのは、性格が悪くなったからでも、管理職として失格だからでもありません。
女性ホルモンの変化や睡眠不足、疲労、仕事上のストレスなど、さまざまな要因が重なっている可能性があります。
アンガーマネジメントに取り組むことは大切ですが、その前に、まず自分の身体と心の状態を確認してみましょう。
「もしかしたら、更年期の影響かもしれない」と気づくことは、自分を責めるためではなく、自分を守るための大切な一歩です。
つらい症状が続く場合は、一人で抱え込まず、婦人科や更年期外来などの医療機関に相談してください。適切なサポートを受けながら、自分に合った働き方を見つけていきましょう。

FemCareeは女性内科医とキャリアコンサルタントという医療とキャリアの専門家がタッグを組み、結婚・出産・更年期などライフステージの変化を迎えても、自分らしく挑戦し続けたい女性を応援するメディアです。










